読書感想ブログその3
作業って何だろう?
作業療法士とは作業を治療に用いる専門家です。
でもその『作業』が何かをいまいち理解できていないことが少なくありません。
僕がまさにそうでした。
そんななかドンピシャな本がありました。
それがこれ。
「作業」って何だろう
作業科学入門
本書は吉川ひろみ先生という、
作業療法士の方なら知らない人はいない、
とても有名な作業療法士の方が執筆された本です。
世間でも「理学療法士さんは知ってるけど、作業療法士さんは何をしてくれる人なの?」
と言われることがよくあります。
作業療法士のなかでも作業療法とは何かを説明できる人はそう多くない、と吉川先生は話しています。
- 作業の定義
当たり前ですが、作業とは人が何かを行うことです。
世間で用いる作業と、作業療法士のなかで用いる作業には少し違いがあります。
作業療法士が定義する作業はいくつかありますがそのなかで共通するのは、
人間が自身の人生にとって意味や目的をもって行う行動や特徴、パターンがあります。
そしてその作業を通して社会参加を実現する方法(治療のために作業を使う)として作業療法があります。
作業科学とはその「作業」そのものについてもっと深く考えていこう、というものであり、
本書は作業科学を理解するための入門書のようなものです。
- 作業をすることは良いことばかり?
作業療法というだけであって、作業は人間にとって良いことだと思われがちです。
でも人を健康にする作業(音楽鑑賞、スポーツ、旅行、友人と遊ぶ、美味しいものを食べる等)もあれば不健康にする作業も当然ながら存在します。
働き過ぎること(ワーカホリック)、アルコール依存症、薬物依存、喫煙、食べ過ぎること等の作業は人を不健康にする作業です。
作業は人を健康にもするし、場合によっては不健康にもなります。
またその作業を行う上で『人』『環境』もとても重要になってきます。
- 健康の定義
一般的に健康とは病気ではないこと、をイメージしますが、必ずしもそうとは言えません。
健康とは身体的、精神的、社会的によい状態であること、とあります。
これはWHOが定めたオタワ憲章のなかで詳述されています。
- 作業科学に必要な視点
同じ作業遂行は2つと存在することはありません。
ゴハンを食べる、という作業も"誰と食べるのか"、"どこで食べるのか"で全く変わってきます。
また同じゴハンをAさんと、Bという場所で食べたとしても、昨日食べたのか、明日食べるのかでは全く別の作業になります。
このように"ゴハンを食べる(作業)"、"Aさん(人)"、"Bという場所(環境)"といった要素に分けるのではなく、融合し合った全体となっていく状態(トランザクション)がある、という視点をもつことが大切になります。
- 作業的存在
作業をすることによって、人は自分自身がどのような存在かが決まってきます。
また、どんな生涯を送るか、どの集団に属するかも決まっていきます。
それをオーストラリアの作業療法士、アン・ウィルコック先生が「d+b3=sh」と表現しています。
- d+b3=sh
これはdoing(作業)+being(存在)、becoming(将来の自分)、belonging(所属)=survival(生存)、health(健康)の略称です。
アン・ウィルコック先生は行うこと(doing)、自分があること(being)、将来の自分になっていくこと(becoming)、
そしてもうひとつ所属すること(belonging)が生存(survival)と健康(health)を可能にすると考え、
さらにこれが健康を増進し、病気や障害を予防すると考えました。
またこのような状態を支えるものの一つに作業的公正が必要だと述べています。
- 作業的公正
人が何かを行うことを出発点として生きていくためには、自分にとって意味のある作業に公平に参加する機会が必要です。
そしてこの公平が保てていない状態、意味のある作業が行えていない状態を作業的不公平(作業機能障害)と呼んだりします。
これを先述したアン・ウィルコック先生と、カナダの作業療法士、エリザベス・タウンゼント先生が世界数カ所にわたってワークショプを行い、提唱しています。
- 作業的不公正
アン・ウィルコック先生とエリザベス・タウンゼント先生は作業的不公正を
①作業疎外
②作業剥奪
③作業周縁化
④作業不均衡
という4種類で考えられると指摘しています。
①作業疎外
朝起きて、仕事に行って、帰って、寝る、といった毎日の単調な生活のなかで、作業を通して生きている実感を持てない、成長することもできない人によくみられます。
②作業剥奪
外的な力で作業が長期間にわたって奪われている状態。災害で家を失い、避難所で暮らしている人たちはこの作業剥奪を経験します。
作業を奪われ続けると、身体は弱くなり、気力も失せ、社会とのつながりもなくなっていきます。
作業剥奪は健康状態の悪化につながります。
③作業周縁化
隅に追いやられている状態。
何か作業は行なっているが、それが周辺的な些細な価値しかない場合を作業周縁化と呼びます。
自分の能力を発揮できない些細な仕事ばかりをしなければいけない場合もこれにあたります。
④作業不均衡
不均衡とはバランスが損なわれている状態を指します。
ワークライフバランスや働き方改革、サービス残業廃止などが必要だと言われるのは働き過ぎを問題視しているからです。
ただしこのバランスがとれているかどうかを判断することは難しく、自分が楽しいと感じる仕事ができている人は、必ずしも自分が働き過ぎているとは感じないこともあります。
- 作業科学と作業療法
作業をしているうちに、病気が治ったり、心身機能障害が軽くなったりすることから、作業療法が注目されました。
作業には力がある、作業の力をみんなが知り、自分の人生に活かしていってほしい、という願いは各地、各分野に発展していきました。
アメリカの作業療法協会初代会長であり、建築家であるジョージ・エドワード・バートン先生は作業の力が高まるには次の6つの条件があると話しています。
①選択、リスク、責任
自分で選び、リスクを引き受け、結果の責任をとるときに、作業の影響力が高まります。
②クライエントの参加
クライエントの参加があってこそ、作業の力が現れます。
③可能性の見通し
作業は簡単過ぎても難し過ぎてもいけません。
できるという可能性の見通しがあるとき、その作業を頑張り続けることができます。
④変化
前例重視の組織や事なかれ主義の集団においては作業の力は小さくなります。
作業を通して、人も、環境も変わり、理想に向かって社会変革を起こしていくことを望む状況が作業の力生まれることを奨励します。
⑤公正
不当な差別や人権侵害がある社会では意味のある作業を行うことを抑圧されてしまいます。
誰もが自分にとっても社会にとっても意味のある作業を見つけるための公正な機会が必要です。
またそのための支援を公正に受けることも必要です。
⑥力の共有
多くの作業は一人ではできません。
誰かとともに行うことで作業の力は強まります。
したがって作業療法士とクライエントとの正しい関係は協働関係である、ということになります。
- 作業療法における作業科学の応用
作業科学を正式な学問として誕生させた南カルフォルニア大学の研究者たちは、作業科学を応用した作業療法を報告しました。
同大学のフローレンス・クラーク先生は作業ストーリーテリングと作業ストーリーメイキングを個人の作業研究で行いました。
作業ストーリーテリングではクライエントが自分の作業について自発的に自然に話すことができるよう心がけます。
作業ストーリーメイキングは作業ストーリーテリングでわかったストーリーを将来へ向けて新たに作っていくことです。
また作業療法士はその作業がクライエントの将来にとってどんな意味があるかを語ったり、進歩していることをフィードバックしたりします。
作業療法士はクライエントが自分の将来の作業についてあれこれ考えるときに、問題を整理していくようなコーチ的な役割が求められます。
以上です。
まとめたつもりがこんなに長くなってしまいました。。。
まだ伝えきれていない所ばかりですが、もし作業科学に興味のある方がいたら、一緒に学んでいけると嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
リーズニングとは何か?
※前回の記事はこちら→エビデンスって必要? - muronoazono’s blog
そのなかで少しふれた『リーズニング』について、
今回考えてみたいと思います。
参考にしたのはコレです
↓
『note』という、文章や動画など様々なコンテンツを投稿できるプラットフォームです。
そこでいくつもの記事を投稿されている作業療法士の寺岡睦先生の記事です。
↓
https://note.com/mutsu13t/n/n814b4e8b535a
寺岡先生は身体障害領域の臨床経験をもち、現在は吉備国際大学で講師を務めておられる方です。
noteのような誰でも気軽に投稿できるものだけでなく、
作業療法に関する様々な研究論文も執筆されており、
記載内容の信頼性も高いかと思います。
ここでは簡単な説明しかできないと思いますので、詳しい内容は寺岡先生のnoteを参照ください。
●リーズニングとは何か
リーズニングとは「思考の道筋」といわれています。
思考の道筋は療法士がクライエントへの介入を計画し、方向づけ、実行し、
結果を内省する過程を意味します。
またリーズニングは様々な呼称があり、
- クリニカルリーズニング
- 専門職リーズニング
- 治療的リーズニング
- 作業的リーズニング
といったものがありますが、基本的には意味はどれも同じだといわれています。
ここでは一般的によく使われているクリニカルリーズニングで説明していきたいと思います。
●クリニカルリーズニングの種類の例
リーズニングには5種類あるといわれており、
①科学的リーズニング
②物語的リーズニング
③相互交流的リーズニング
④実際的リーズニング
⑤倫理的リーズニング
があります。
①科学的リーズニング
これは前回ブログに投稿したEBM/EBPの内容を確認してもらえたらわかるかと思います。
※前回の記事→エビデンスって必要? - muronoazono’s blog
②物語的リーズニング
対象者の語りから置かれている状況を理解するときに使用します。
その方がこれまでどんな生活を送ってきたのか。
これから何をしたいと思っているのか。
どんな行為に意味を感じているのか。
などを構成的、あるいは非構成的評価によって確認していきます。
③相互交流的リーズニング
療法士が一方的にプログラムを立案していくのではなく、
対象者と共に考えるなかで最善のプログラムを考えていきます。
いわゆる協業というやつでしょうか。
④実際的リーズニング
現実的制約を踏まえた上で臨機応変に判断するときに使用します。
ロボットスーツ(HALなど)を用いることは有名です。
しかしこのアプローチは誰でもどこでもできるものではありません。
今ある物理的、人的環境のなかで提供できる、
最善のリハビリテーションを考えていく必要があります。
⑤倫理的リーズニング
医療専門職という認識をもち、
実践中に行ってよいことなのか、
それとも悪いことなのかを判断する際に活用します。
対象者の方が望むものが、
家族、社会的に望ましくない内容であった場合、
療法士はどう判断するのか、
こういったことも倫理的リーズニングに含まれます。
以上がクリニカルリーズニングの大まかな概要です。
療法士はこれら5つのリーズニングを常に繰り返し、
状況に応じて順不同的に考えていく必要があると述べています。
またこれらは療法士と対象者が変わるとまた新たなリーズニングが始まり、
その視点や深化は経験とともに変化していくとも述べています。
今年入職された療法士の方や若手と呼ばれる皆さんは利用者(患者)さんお一人お一人のことを全て完璧に理解し、
リハビリプログラムを立案していくことなどは
なかなかできるものではありません。
(私なんか毎日テンパってました…)
毎日の忙しさのなかに少しでも考える時間を見つけ、
これら思考の道筋をうまく活用していけたらと思います。
偉そうなことを言ってる私もまだまだ全然できていないので、是非コメント等いただき一緒に勉強させてもらえると嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
エビデンスって必要?
EBM/EBPという言葉は医療関係者の方は既に周知していると思います。
今回はこのエビデンスって必要なのかどうか、
というテーマについて考えてみます。
結論からいうと私はエビデンスは必要だと思っています。
しかし、そう言いきるには少し説明をしないといけないと感じています。
Evidence Based Medicine/Evidence Based Practice
日本語では「根拠に基づいた医療/根拠に基づいた練習」といった訳され方をしていると思います。
しかし、この「根拠」という日本語訳が少しEBM/EBPを誤って理解してしまうことが多いそうです。
偉そうに書いていますが私も以前まではEBM/EBPという言葉に対してアレルギー反応を示していました。
ですがそれをとてもわかりやすく説明してくれる方がいました。
その人は作業療法士の竹林崇先生という方です。
竹林先生といえば脳卒中リハビリテーションにおけるCI療法でとても有名な方です。
そんな竹林先生ですが、セミナーや著書執筆活動以外にも、
SNS(Twitter、YouTube、noteなど)を通して様々な形で最新の情報をわかりやすく発信してくれています。
今回はそのSNSのなかからYouTubeにアップされた内容を紹介したいと思います。
↓
【EBP/EBMシリーズ①】EBP/EBMとは〜歴史と定義からリハ領域での活用を考える〜 - YouTube
詳細は↑のYouTubeを視聴していただければ問題ないのですが、少しだけ自分なりに説明したいと思います。
日本語はEvidence=「根拠」といわれることが多いですが、先生は「証拠」「実証」という
言葉を使用する方が理解しやすいのではないかと説明しています。
またEBMと聞くと、
「エビデンスのあることしかやっちゃダメなんでしょ?目の前の利用者さんに何でもかんでもエビデンスをあてはめようとする考えってどうなの??」
という批判も少なからずありそうな気がします。
自分もそんな考えを持っていました。
でもEBMはそんな偏った考えではなく、眼前の利用者さんにとって究極のオーダーメードである、
と先生は話しています。
それを実践していくためには5つのステップが大切だといわれています。
この内容に関しても違う動画で丁寧に説明してくださっています
↓
【EBP/EBMシリーズ②】EBM/EBPの5STEP - YouTube
Step1:眼前の対象者についての問題の定式化
Step2:定式化した問題を解決する情報の検索
Step3:検索して得られた情報の批判的吟味
Step4:批判的吟味の患者への適応
Step5:1~4の再評価
さらにその5つのステップをPICOという4つの視点を使って考えていくと理解しやすいといわれています。
Patients:どんな患者(対象者/利用者)さんで
Intervention:どんな介入があるのか
Comparison:他の介入と比較して
Outcom:介入の結果どうなるのか
Step1:眼前の対象者についての問題の定式化
目の前の対象者さんは一体どういった方なのか?
ここにはどういった疾患をお持ちで、どのような人物の方なのか、といった内容が含まれます。
Step2:定式化した問題を解決する情報の検索
Step1から、その疾患や性別、年齢などに当てはまるとされる有益な情報を検索する。
恐らくEBMのイメージはここが特に強いのではないかと感じます。
Step3:検索して得られた情報の批判的吟味
検索して得た情報が果たして本当に目の前の対象者さんのリハビリテーションに適応できるものなのか。
この点がとても大切で一つ間違ってしまうと、
目の前の方を無視してエビデンスのみを優先させてしまう危険性があると感じています。
Step4:批判的吟味の患者への適応
たとえ高いエビデンスがあるといわれている内容であったとしても、
対象者さんがその治療方法を本当に望んでいるのか?
リハビリテーションは療法士のためにあるものではなく、
それを受ける対象者さんのためのものです。
なので対象者さんが望んでいなければ、
高いエビデンスであっても使用するべきではないと考えます。
Step5:1~4の再評価
以上のことを繰り返し評価しながら、
必要に応じて新たなプログラムを立案していくことが必要だと話しています。さ
ここでは本当に簡単な説明しかできていません。
なのできちんと理解するためには、
やはり一次情報(原著論文)から情報収集していくことが大切だと思われます。
EBM/EBPの理解にはこの他にもクリニカルリーズニングや、
OTでは近年『作業療法リーズニング』といった考え方も大変重要になっています。
今回はリーズニングに関しては割愛させていただきます。
自分がOT1年目の頃にこれらの情報を得ていたら、
ちょっと未来は変わっていたのかなぁと思わなくない気がします。
でも今からでも遅くないと思っていますし、
昔も今も変わらず目の前の対象者さんのために、
とにかく必死のパッチで動いて考えて動いていきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
読書感想ブログその2
わかりあえないことから始める
去年5月に書いた内容を再編集しました。
コロナをきっかけにオンラインによる取り組みを少しずつ実践していく日々が増えました。
そのなかでダイアローグ(対話)が果たしてオンラインでも可能なのかどうかを、考えているところです。
自分がコミュニケーションについて調べているなかで、ダイアローグ(対話)について触れている本がありました。
その本がコレです
わかりあえないことから
~コミュニケーション能力とは何か~
著者は劇作家でもある平田オリザさんという方です。
この本では“人と人は基本わかりあえないものだからわかりあえないことから始めていこうよ”
と、
コミュニケーションを少し軽い気持ちで考えてみよう、といった内容になっています。
海外旅行に行かれた人ならわかるかもしれませんが、
外国の人と会話したとき、ちょっとでも言葉が通じたらむちゃくちゃ嬉しい気持ちになりますよね?
コミュニケーションはそんな程度のものだよ、と著者の平田オリザさんは書いています。
この本のなかで、【対話と対論の違い】というテーマが興味深かったので触れておこうと思います。
そもそも両者の言葉の意味は・・・
対話:二人以上の人物間の思考の交流
対論:両者が向かい合って議論すること。またある事柄について対抗して行う議論
とあります。
日本人は対話文化がもともとないといわれており、どちらかというと『会話』
の方が得意な印象です。
会話は相手との関係を構築していく上で必要なものなので、
当たり障りのない挨拶や世間話をすることが多いです。
また多くの日本人は『対話』と『対論』と『会話』を同じようなものとして認識している傾向があるのか、
相手と違った意見を言おうものなら、
「あの人は私のことが嫌いだから私の意見に同意してくれないんだ!」
と負の感情が入りかねない状況がしばしばみられます。
おそらくこれは普段から対話ではなく、会話(相手に同調するようなやり取り)しか経験していないから、
という理由もあるかと思います。
また著者の平田オリザさんがヨーロッパの方と舞台公演の打ち合わせをしていた際、
話し合いの末、平田さんがはじめから話していた意見に近いものになり、
「結局僕の言ってた意見だね」と話したところ、
相手は「いや違う。これは私とあなたが2人で話し合った上で最終的にでてきた意見だから2人の意見だ」
と話したそうです。
このエピソードを読んで私はとても納得がいきました。
Aという意見とBという意見。
はじめにAの意見を主張していたときは、Bの意見の良し悪しはわからなかった。
でもお互いの考えを話し合い、AとBの良い部分、悪い部分両方を理解できた上でAという意見になったのであれば、
それは『A』ではなく『A´(ダッシュ)』である。
『対話』というのはまさにこういうことをいうんだなと感じました。
そしてもっとも重要なのはこの対話は誰も初めからはうまくできないということです。
何度も伝えようとし、それでもうまく伝わらないという経験をくり返していくなかでしか獲得できないものでもあると著者は述べています。
そう考えると、いま実践しているオンライン会議や勉強会に対して「やっぱりオンラインでは伝わらない」
と悲観的に捉えるよりも「対話を積み重ねていくなかでオンラインでもわかりあえるかもしれない」と
考える方が未来は明るいんじゃないかと思えるようになりました。
もっと話したいことはありますが、このへんにしておきたいと思います。
もし興味があれば一度読んでみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
読書感想ブログその1(の続き)
『キャリアデザイン』とは何か?
前回紹介した本の内容の続きです。
キャリアの語源は馬車のような車輪のついた乗り物や荷台を指すそうです。
つまり運ぶ、連続的に進んでいくというイメージでこれが仕事上での時間経過と結びついて表現されるようになったそうです。
例えばキャリア官僚やキャリアウーマンなどはバリバリ仕事をしている人というイメージがあります。
他にも様々なキャリアの定義がありますが、ここでは職業上のキャリアについて話したいと思います。
キャリアには大きく分けて2つあると言われています。
①客観的キャリア
②主観的キャリア
①は昇進や異動、栄転など外部からみて誰でもわかるキャリアのこと。
これは組織の側面からとらえることができます。
②は本人が自分のキャリアをどのように捉えているか。
技術や知識、人間関係、ステータス、またそれらに対する満足度など個人の側面からとらえることができます。
これらはどちらか一方だけ満たせば良い、というものではなく、どちらもバランス良く高めていくことが大切だと著者は述べています。
そのためには何を高めていけばいいのかを知る必要があります。
- キャリアを築く3つの軸
①②を高めていくには3つのポイントがあり、
それが(1)スキル(2)モチベーション(3)マーケットバリュー
と言われています。
(1)スキル
スキルには大きく分けて『社会的スキル』と『職業的スキル』の2つがあります。
『社会的スキル』は社会人としてのスキルのことをいい、コミュニケーション能力、問題解決能力、文章能力などがある。
『職業的スキル』は各職種の専門的な知識や技術がある。
リハビリ、と一つにいっても病院(急性期、回復期、生活期)、施設(特養、老健、通所など)、訪問など、
それぞれの場所に役割があり、それに伴うスキルも変わっていく。
(2)モチベーション
どんなにスキルがあってもモチベーションがなければ続かない。
どれだけ高い給料をもらったとしても、嫌な仕事は続かない。
さらに難しいのは「自分は何によってモチベーションが上がるのか」を知る必要がある。
好きな食べ物、趣味、特技などを探していくように、これをどう「仕事」のなかで見つけていくことが大切かということを述べています。
(3)マーケットバリュー
マーケットバリューとは日本語で「市場価値」。
ここでいう市場価値は『組織』と『社会』のことをさす。
たとえば、訪問リハビリの現場で働くキャリアを選択した場合、すでに弊社に就職している方の市場は「今の職場」になります。
したがって今の職場で最大限価値を上げることが重要です。
他方、プロスポーツ選手の治療やリハビリをしたい、というキャリアを選択したい人からすれば、
その人の市場は弊社というよりも、スポーツ整形などのような環境になるかと思います。
- 3次元で自分のキャリアをとらえる
キャリアを築いていくうえで、スキル、モチベーション、マーケットバリューと3次元でとらえていくことは一つのポイントになるかと思います。
しかし私を含めた、多くの医療・介護業界関係者は『スキル・モチベーション偏重型』といわれています。
このへんを本著ではシビアに書いています。
以下はその内容です。
『「自分はこんなに頑張ってるのに何で給料が上がらないの?!」
と嘆く人がいるが、給料は自分のすきなスキル、モチベーションだけでは上がらない。
給料を最終的に上げるのは、あなたのマーケットバリューだ。
つまり自分の好きなことではなく、組織や社会が求めるスキルを身につける必要がある。
またモチベーションだけでもスキルがなければ、マーケットバリューは上がらない。
マーケットバリューを見ながらスキルを上げ、モチベーションが続く仕事を見つけていくことが大切だ』
これは好きなことだけやってても意味がない、といった簡単な話ではないと感じています。
大切なのは3次元でとらえること。
なので、療法士1~3年目くらいの頃はとにかく自分の好きなことに没頭することが大切じゃないかと思ってます。
1次元でとらえていたものを、2次元、3次元と徐々に立体的に見るようにしていく。
そんなことを伝えようとしているのかなと感じました。
これ以上書くと止まらなくなるので、このへんで終わります。
ここまでは本著でいう序文です。
少しでも興味をもたれた方がいたら嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
読書感想ブログその1
突然ですが皆さん、キャリアデザインという言葉はご存じですか?
ビジネス業界では頻繁に聞くワードではないかと思います。
最近はこのキャリアデザインという考え方はホワイトカラーのビジネスマンだけでなく、
私達医療・介護系の人たちにも必要な視点になってきています。
今回はこのキャリアデザインに関する本を紹介したいなと思います。
その本がこちら
『医療・介護職の新しいキャリア・デザイン戦略~未来は、自分で切り拓く~』
「医療・介護業界は一生安泰。
しかも国家資格を持っていればいつでも再就職できるから問題なし!」
そんな風に思っている人も少なくないかもしれないです。
著者の三好氏はOT(作業療法士)の資格を持ちながらMBA(経営学修士)の肩書きを持つ経営コンサルタントの方です。
そんな三好氏は様々な医療・介護施設の経営コンサルに携わっており、
この業界に求められる人材はどういった人なのかを本書で述べています。
終身雇用制度、年功序列が当然とされていたひと昔前までは「良い職員=長く勤めてくれる職員」でした。
しかし経営環境が刻一刻と変化していく今日では上記のような考え方が徐々にそぐわなくなってきました。
そうなると経営者の立場からすれば、その時々で必要なスキルを持ち合わせた人材を採用したくなるのが当然の考えだと思います。
「あなたは何ができる人なのか」
著者はそう読者に問いかけています。
私は読み進めていた手が止まりました。
「自分は何が得意なんだろう」
「自分にはだれにも負けないと思えるものがあるのか」
本書はそんな様々な境遇にある医療、介護職の方々に向けたいわば「自分探し」のような内容になっています。
気になる方は一度読んでみてください。
ちょっと長くなってしまったので、この続きは次回また投稿したいと思います。
次回はそもそも『キャリアデザイン』とは何なのかについて書きたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
感染リスクについて考える③
突然ですが皆さん、ラジオは聴きますか?
私は移動中や家事のすき間時間などによくラジオを聴くことが多いです。
そのなかでも『荻上チキ・session-22』というのをよく聴いています。
荻上チキ・Session|TBSラジオFM90.5+AM954~何かが始まる音がする~
そのラジオのなかで感染症が専門で神戸大学病院感染症内科・教授の岩田健太郎さんをゲストに呼んで『新型コロナウィルス感染対策と最新研究』というテーマについて話していました。
1時間ほどの内容でしたが、そこから私たちの仕事にも繋がる部分だけを要約して紹介したいなと思います。
※去年4月頃の内容のため、情報が最新でない部分があります
ホームページ内にはその内容の音声アーカイブ&文字起こしもあるので、興味がある方はそちらもご参照ください。
8:18~三密(密閉、密集、密接)について
専門家会議で発している「三密を避けるように」というメッセージは、逆に「三つ揃わなければ問題ないでしょ?」という意味にすり替えられてしまう可能性がある。
しかしこれはすでに起こった過去の事例の追随でしかない。
今やるべきことはこれから予見すべき未来に対してどのような対策をとるか。
そしてもっとも大切なことは『感染経路』であり、今やるべきことは『人と人との距離を離すこと』。
全国すべてで同じ対策をとるわけではないが、感染者数の多い地域(大阪)では『全ての人がもう感染者である』という認識に切り替える(パラダイムシフト)必要がある。
23:26~マスクで感染は防止できるのか?
(Q&A)
マスクによる感染予防効果は非常に限定的、もしくは無いに等しいというのが世界中の専門家の見解で一致している。
ではなぜみんながマスクをつけているのか?
最近のCDC(アメリカ疾病管理予防センター)やWHO(世界保健機関)の考え方が少し変わりつつあり「今はもうみんなが感染している」という認識で動いているため、
「自分が他者に感染させないようにしよう」という状態になっている(まだ仮説であり科学的エビデンスはない)。
マスクよりももっと大切な予防方法こそが『人との距離(ステイホーム)』である。
マスクによる予防は『距離をとる』という代替方法にはならない。
28:45~咳エチケット
マスクをつけていることで咳エチケットが疎かになるケースもみられるが?
マスクをすることで咳などのしぶきを抑えるという科学的データがあるのは『不織布(医療用)マスク』。
したがって布(ガーゼ)マスクを使用しているときは咳エチケットは欠かさず行う。
30:15~レジなどでみかける透明のビニールや透明なアクリル板などによる予防効果は?
非常に面白く良いアイデア。
これらは飛沫を予防するのに十分効果がある。
※いまでは当たり前の光景になりましたね
37:25~アルコール以外での消毒方法はあるのか?
次亜塩素酸は効果的。
物を拭くことにも活用できるし、手指消毒に使用することも可能。
ただし両者の濃度には若干違いがある。
手指消毒に使用するものは薄めなければ手荒れを引き起こす原因となる。
※ラジオでは説明していませんでしたが、ここで話しているのは『次亜塩素酸ナトリウム(一般的なハイターなど)』のこと。
手指消毒に使用できると言っているのは『次亜塩素酸水』のことを指します。
名前は似ていますが、成分は異なるものなので、十分調べた上で実行する必要があります。
以下、次亜塩素酸水に関する各情報です。
①次亜塩素酸水・電解酸性水とは
↓
次亜塩素酸水(じあえんそさんすい)・電解酸性水とは|備える.jp
②次亜塩素酸水による手指消毒の有効性
↓
※過去に貼り付けたリンクが現在は使われていませんでした…
また石鹸と水で洗い流すことも有効。
台所洗剤による消毒
↓
※これまた過去に貼り付けたリンクが期限切れになっていました…
物を拭く点では熱湯も効果的。
もしいよいよ商品が手に入らないという事態になったら『手』を基準に考えていく。
物の消毒が十分にできないとしても、手をしっかり洗うという方法をとれば効果は期待できる。
53:18~新型コロナウィルスはいつ収束するのか?
昔から『安心安全』という言葉があるがこれは良くないと思っている。
外国語で『安全』という言葉はあるが、『安心』という言葉はない。
『安心』とは根拠のない気分の良さのことをいうので危うい。
根拠に基づかないが「安心感を与えてほしい」というものは良くない。
むしろ不安になるべき根拠があるなら、ちゃんと不安になるべき。
それを踏まえたうえでコロナは、日本国内で第一波があと数か月で収まることはあったとしても、世界的にはそう簡単に収束しないだろう。
もちろんワクチンが開発されたとか、効果的な医薬品ができた、となれば話はまた変わってくる。
以上です。
一般向けのラジオですが、内容によっては私たち専門職と呼ばれている人間にも知識を補完できる部分があると感じました。
現状を『コロナが収束するまでの取り組み』と捉えるのではなく、『Withコロナ=コロナと共に生きる』ために今まさにパラダイムシフトしていく岐路に立たされているのかもしれないなと感じました。
出演者の荻上チキさん(左)と南部広美さん(右)
駄文、長文にも関わらず最後まで読んでいただき、ありがとうございました。