読書感想ブログその9
今回の本はコレ
残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法
●はじめに
なぜ自己啓発がこれほど僕たちを引きつけ、結局は裏切るのか。
僕たちはどうしていつも不幸なのか。
そして、世界はなぜこれほどまでに残酷なのか。
能力は開発できない。
やってもできないから。
「私」は変えられないから
伽藍を捨ててバザールに向かえ
恐竜の尻尾の中に頭を探せ
※伽藍:
昔ながらの村社会。閉鎖的空間。失敗からの再挑戦も難しい。
※バザール:
解放された世界。流動的に人が入れ替わる。新旧入り乱れ序列もない。
なんだか冒頭からマイナス発言連発な気がしますね。
でもこれ、まんざら全てをマイナスに捉えているわけではないんです。
本書のタイトルにもあるように、人がなかなか幸せになれないこの残酷な世界のなかでもたったひとつだけ生き延びられる方法があるよ、
というむしろポジティブな本であると感じています。
そのためには逃れることのできない現実をまず受け止めていく必要があるので、一つずつ紹介していきたいと思います。
●序章 「やってもできない」人のための成功哲学
・子供の成長に子育ては関係ない
子供の成長に親は必要ないのかもしれない。
子供の性格の半分は遺伝によって、残りの半分は家庭とは無関係な子供同士の社会的な関係によって作られる。
遺伝学や心理学の「発見」をまとめると・・・
①知能の大半は遺伝であり、努力しても大して変わらない。
②性格の半分は環境の影響を受けるが、親の子育てとは無関係で、一旦身に付いた性格は変わらない。
コレを決して「子育てをしなくていい」という結論として捉えるのではなく、
適度な距離感と責任感で子どもと向き合っていく方が双方にとって幸福なんじゃないか、
というふうに解釈してみました。
・「やってもできない」成功哲学
もしも僕たちの人生が「やればできる」と言う仮説に拠っているのならば、この仮説が否定されれば人生そのものが台無しになってしまう。
それよりも「やってもできない」と言う事実を認め、その上でどのように生きていくのかの「成功哲学」を作っていくべき。
どんなことも「やればできる」で押し通せるほど世の中甘くないですよね。
私は著者(橘さん)のいう「やってもできない」成功哲学を持つことができたらどんなに幸せだろうか、と感じました。
●第1章 能力は向上するか?
1、「やってもできない」には理由がある
子供たちは、みんな良いところを持っている。だったらそれを、ちゃんと評価してやればいい。
アメリカの認知心理学者はこれを「多重知能(MI)の理論」と呼んだ。
・ダメでも生きていける比較優位の理論
Aさんは法律家としても、タイピストとしても、Bさんを絶対的に上回る。
これを「絶対優位」という。
法律家としての2人の能力を比較すると、AさんはBさんより100倍有能だ。
一方タイピストとしては、AさんはBさんより2倍速く打てるに過ぎない。
このときAさんにとって、法律の仕事は「比較優位」、タイピストの仕事は「比較劣位」にある。
この場合、Aさんは比較劣位にあるタイピストをBさんに任せ、比較優位にある法律の仕事に集中することでずっと大きな利益を手にすることができる。
Bさんは、法律の知識でもタイピングの腕でもAさんに劣っているけれど、タイピングにおいては比較優位にある。
このようにしてBさんは、たとえすべての面でAさんに劣っていても、タイピングの仕事で世間並みに暮らしていける。
法律に関してはAさんの1%の事しかできないけど、タイピングなら50%もできるからだ。
自由な労働市場では能力競争で一番にならなくても比較優位を生かすことでみんなが仕事を得ることができる。
2、能力主義は道徳的に正しい
・1億4000万円の人的資本
人の働く価値は「学歴」「資格」「経験(職歴)」の3つで評価できる
なぜそうなるのか。
学歴も資格も職歴も「差別」として否定してしまったら、一体何を基準に人を評価していいのかわからなくなってしまう。
・差別を擁護する良心的な人たち
能力主義は差別のない平等な社会を築くための基本インフラ。
能力は努力によって無限に成長する。
能力が人種や差別のような先天的なもの(本人の努力によって変更不可能なもの)ならば、能力で人を評価することも差別になってしまう。
3、「好きを仕事に」という残酷な世界
・現代社会の最強の神話
グローバルな能力主義の社会では、労働者は「能力」によってクリエイティブクラスとマックジョブ(マニュアル化された仕事)にニ極化する。
自己啓発の唱導者たちは、能力が努力によって開発できるとして、効果の判然としない様々な教育プログラムを提供するようになった。
だが現実には、どれほど「教育」してもほとんどの人は落ちこぼれてしまう。
僕たちを支配する自己実現の神は、能力主義に適応できない迷える子羊たちに、より強力な神話を与える。
好きなことを仕事にすれば成功できる
向いている事は好きなこと
好きなことの「専門家」になればいい
能力は向上するか、という問いに対する結論は「無限に成長する」でした。
ただしその能力は「自分が好きなこと」「向いていること」であることが必須条件になりそうです。
それ以外のことはすべて「やってもできない」という結果になる可能性が高いですね。
●第4章 幸福になれるのか?
1、君がなぜ不幸かは進化心理学が教えてくれる
・僕たちが不幸な理由
僕たちは幸福になるために生きているけれど、幸福になるようにデザインされているわけではない
これは前に紹介した図書、『幸福の資本論』の冒頭にも書かれてあった一文ですね。
詳細は前ブログに譲ります。
↓
https://muronoazono.hatenablog.com/entry/2021/04/29/004009
●終章 恐竜の尻尾の中に頭を探せ
インターネット時代のニッチ市場に巨大な変化が起きている。それがロングテール。
音楽配信サービスではごく少数のヒット曲に人気の大半が集中。
この部分をショートヘッドという。
有象無象のロングテールの作品はこの世に存在しないのと同じ。
インターネット、(レコード)は在庫をほぼ無料で保管できるようになった。
在庫や販売の流通コストがゼロになれば、商品を売れ筋に絞り込むのではなく、テールを伸ばせるだけ伸ばして収益を最大化させる。
・雪の結晶
全体と部分が自己相似になっているこうした図形をフラクタルと言う。
無限のロングテールを持つ市場では、いずれは誰もがショートヘッドになる。
大事なのはマイケルジャクソンのような時代のアイコンを目指すことではなく、自分の好きなジャンルでショートヘッドになること。
・君にふさわしい場所
あらゆる市場にニッチがあり、かっこいいとか好きとかの感覚を君と共有する人たちが集まっている。
彼らに引き寄せられると同時に、引き寄せる魅力を持っているから、それを上手にビジネス化することで「好きを仕事に」できる。
有名大学でMBAを取得した優秀な人たちが最新のマーケティング理論をひっさげて企業に挑戦するがほとんど失敗する。
それは儲かることをやろうとして好きなことをしないからだ。
「好き」を仕事にすれば、そこは必ずマーケットがあるのだから空振りは無い。
ほとんどの人は社会的な意味での「成功」を得られないだろうけど、少なくとも塁に出てチャレンジし続けることができる。
伽藍を捨ててバザールへと向かえば、そこにはきっと君にふさわしい日があるに違いない
私が本書を読んだ上でもっもと大切な部分は終章に書かれてある内容ではないかと感じました。
伽藍という閉鎖的空間にいつまでも居るのではなく、バザールという解放された世界へ向かうことが、
この残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法を見つけることができる。
すなわち自分にとって努力しなくてもいいこと→『好きなこと』『向いていること』に出会えることができる。
というのが本書のもっとも伝えたい内容なのかなと感じました。
以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。